7 瑕疵の根拠
本件建物には瑕疵一覧表に示したように、床下防湿シート、シール材・コーキング、シャッターケース内部壁面、先貼り防水紙、防水紙の施工方法、防水テープの施工方法、外壁材(サイディング)と通気層において、青木興業の重大な施工不備が存在する。契約内容に適合しない約定違反が2件(1番及び7番)、住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)の技術基準に対する違反が5件(1番、3番、5番、6番及び7番)、社会通念上の施工不良が2件(2番及び4番)、住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準との相違が1件(4番)認められ、いずれも瑕疵を構成する重度の過失であると判断できる。
また、本件建物の耐用年数は、火災保険に明記されている通り少なくとも30年である(乙96号証)。にもかかわらず、「耐震診断で求めるところの建築基準法の想定する大地震動での倒壊の可能性は極めて高く、居住者の人命を損なう恐れがある(乙14号証4ページ)」と鑑定されている通り、本件建物の構造壁は多数崩壊して、安全性は極めて低くなっていた。耐用年数について明示の契約がなくても、請負の目的物が通常備えるべき品質・性能を具備することは黙示に合意されているとみるべきであり、こうした点からも構造壁の崩壊は瑕疵を構成する具体的な事実となる。そして、当事者間には少なくとも建築基準法などの法令に適合した建築工事をする合意ができたものと推認できるのであり、施工者が漏水や通気不良を予見しながら引き渡し、倒壊しかねない状況に至った本件建物は建築基準法及び同施行令に適合せず、青木興業は善管注意義務にも違反している(瑕疵一覧表8番)。
そもそも、原告が建築士法第18条3項、第20条3項及び善管注意義務を履行していれば、本件建物の損害を防げたのだ。建築基準法と建築士法は瑕疵を防ぐ関係にあることからもわかる通り、原告の不法行為は瑕疵の一因である。
その上、前述したように被告は約300万円もの損害を被っているのだ。これほど多額の損害を発生させたという事実も瑕疵の要件となる。
よって、本件建物においては建築工事に瑕疵があるというべきである。