4 本件建物の欠陥原因
本件建物の欠陥原因については、補修前の状態(不具合の内容)、あるべき状態とその根拠、補修費用等を別紙「瑕疵一覧表」と別紙「瑕疵説明図」に整理している通りである。
5 本件建物の欠陥現象
本件建物の不具合は瑕疵一覧表に示した通りだが、これらの不具合がどのように作用したのか、以下に欠陥現象として明らかにする。
ア)シャッターケースから雨水が侵入した
①サイディングとシャッターケースの繋ぎ目でシール材の充填が不十分だった。②そのため、シャッターケース内部に雨水が侵入した。③シャッターケース内部壁面には防水紙が施工されていなかった。④防水テープを施工していないシャッターケース左右側から、防水紙の内側に雨水が侵入した。
イ)窓台部分(窓の下部)から雨水が侵入した
①サイディングと窓枠の繋ぎ目でシール材の充填が不十分だった。②窓枠には防水テープが施工されず、窓台部分には先貼り防水紙が施工されなかった。③そのため、窓枠や窓台部分から防水紙の内側に雨水が侵入した。
ウ)防水紙の内側に侵入した雨水が滞留した
①開口部を防水テープで防水しなかった。②防水紙の重なりが足りなかった。③防水紙の周囲をテープで塞いでいた。④そのため、防水紙の内側に侵入した雨水が、そのまま滞留する結果となった。
エ)防湿シートの未施工で木材の腐朽が促進された
①床下土中に防湿シートを施工しなかった。②そのため、土中などに含まれる菌類が気流に乗って壁体内部に広がりやすかった。③水分が保たれた木材で広範囲に渡って腐朽菌が繁殖した。
オ)滞留した水分が蒸発せずに壁体が腐朽した
①防水紙を施工した壁面に胴縁もしくは金具を施工せずに、窯業系サイディングを直接打ち付けた。②外壁通気工法に必須の通気層が全く確保されなかった。③そのため、防水紙の内部に滞留した水分が蒸発しなかった。④木材が腐朽して、構造壁が崩壊した。
通常、シール材の充填不備や劣化などでサイディング内部に雨水が侵入したとしても、防水紙によって木材には影響しないように設計されている。また、漏水によって侵入した水分は通気により蒸発して、木材が守られるように設計されている。ところが、本件建物では、そうした防水施工の基本が全て不良であった。ア)~オ)の欠陥現象は複合的に作用した上に、外観や室内からは一切確認できない壁の内部で発生しており、長期間かけて木材の腐朽は進行した。サイディングを剥がして確認した南北面では、1階南面で100%、2階南面で約67%、1階北面、2階北面ともに50%に相当する構造壁が崩れて、機能しなくなっていた(乙14号証)。
なお、本件建物は建設大臣認定の木質パネル一体構法なので、構造耐力は設計者である原告しか計算できない。また、建築基準法における木造2階建て住宅等の四号建築に該当し、構造計算が義務づけられていない。しかし、失われている構造壁が多数ある事実によって、本来の設計強度に著しく劣ることは客観的に明らかである。