判決文を精査すると色々と見えてくるものがあります。老人は骨折だけで1年5カ月も入院していたわけではなく、遺族は「事故を原因とする脳の損傷によって認知症になった」と主張していました。ところが、右慢性硬膜下血腫が事故前から存在したと地裁判決では認めています。そうすると、遺族が主張する根拠が崩れたはずですが、なぜか判決は、遺族が主張していない「転倒による入院」が認知症の原因だと認定しました。この因果関係が不思議でなりません。
また、認知症はアルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型、前頭側頭型に分類されるのに、判決文には一切記述がありませんでした。認知症を正しく見極められる医師は少なく、間違った処方によって症状が悪化し、身体機能が低下する事例も数多くあります。しかも、誤嚥性肺炎を繰り返していたのに、胃ろうという選択を行なわなかったのは本人もしくは遺族です。日本の医療では、高齢者に誤嚥性肺炎の危険があれば、標準的な医師は胃ろうを勧めます。それが社会問題化していますが。
事故を忘れた頃に被告にされた少年の両親は堪ったものではありません。最高裁で勝訴するまでにかかった費用は多額のはずです。訴訟に縛られた少年と両親の人生は滅茶苦茶にされました。なぜ、一審二審で不可解な判決が出たのでしょう。誰が実質的に提訴を押し進めたのでしょう。自爆に等しい事故と誤嚥性肺炎の因果関係が認められるなら、私の名誉毀損訴訟でもトンデモ判決が出ないとは言い切れません。本当に裁判は理不尽のオンパレードです。