ところが、債務不履行責任があるという主張ならば、民法167条によって債権は10年で消滅時効となりますが、消滅時効の起算点は明確に「権利を行使することができるとき」だと規定され、除斥期間という判例は存在しません。ということは、ヤマダ・エスバイエルホームが施工を監理しなかったのは債務不履行であり、施工監理が履行されていれば損害が発生しなかったという因果関係を私が主張していれば、権利を行使できなかったという点で民法724条を根拠とするよりも立証しやすかったはずです。なぜなら、素人が建築士法を知るはずはないし、監理報告書が提出されなくても疑問を持つわけがありませんから。
インターネットで調べても、債務不履行は10年で、不法行為なら20年だから、不法行為を問うべきといった解説が多かったように記憶しています。最初に相談した弁護士も不法行為の争いが主になるが、除斥期間のハードルは高いと説明しました。しかし、状況によっては必ずしもそうではないのです。私は法律を専門的に勉強しているわけではないので、あくまでも素人の仮説ですが、関口剛弘裁判官が確認したのはこうした法律構成の余地があったからかもしれません。
今さら後悔しても仕方がないし、青木興業の瑕疵担保責任についても除斥期間は認められました。だから、債務不履行を根拠としても、「素人でも10年以内に監理報告書の未提出に気付き、建物引き渡しから10年後を起算点としても10年で消滅時効となる」とされて敗訴した可能性は高いのでしょう。けれども、どこかから圧力がかかっているのか、除斥期間をなくす民法改正が国会で可決されない状況は続いています。誰かの役に立つかもしれないので、不法行為の除斥期間を回避し、債務不履行の消滅時効で争う方策として書き留めておきます。