3 水性高分子イソシアネート系接着剤と健康被害の因果関係
反訴被告は、準備書面(1)訂正申立書・第1(2ページ)において、「原告が使用している水性高分子イソシアネートに関しては、短期間の間に硬化し、固体状となるため、イソシアネートの揮発・溶出することはなく、有害性の問題は生じない」と述べているが、それは誤った理解である。
平成24年7月15日発行の臨床環境医学(第21巻第1号)に掲載された論文「環境に広がるイソシアネートの有害性(乙72号証)」の要約には「単分子でもプレポリマーでも粉塵でも有毒である」と明確に示されている。また、「多様な市販のポリウレタン製品が、必ずしも適切な条件で重合・高分子化が完成して揮発物を含まない固体になっているかどうかも疑わしい」とある通り、全てのイソシアネートが反応して別の物質に変化しているとは限らないのである。しかも、「粉塵のポリウレタンも有害であるが、粉塵は大気中で紫外線および他の大気汚染物質との作用で、イソシアネートに解重合しながら拡散し続けることも考えられないことではない」のであり、接着剤を塗布した木材が消失している本件建物においては、完全に反応しなかったイソシアネートが粒子状の物質となって浮遊し、健康被害をもたらしたと合理的に導ける。雨漏りによって木質パネルが崩壊する損害が発生していなければ、健康被害が発生していないことは火を見るよりも明らかである。
反訴被告は、現在使用している接着剤を根拠として反論しているようだが、平成3年の本件建物建築時に使用した接着剤について、健康被害の原因ではないと立証していない。第1事件において反訴原告は文書提出命令を申し立てていた(乙73号証)が、反訴被告に確認した青木興業は、文書が存在しないので提出できないと答えていた。にもかかわらず、反訴被告は化学物質名を明記して反論しているのだから、信頼性は極めて低いと言わざるを得ない。
しかも、文書(甲6号証の1)の提出者は反訴被告の子会社に商品を販売している利害関係者であり、証拠能力は認められない。その上、添付してある論文(甲6号証の2)は昭和62年に作成されており、その時代にイソシアネートから発生する微量の有害物質を正確に測定できたのかどうかも疑わしい。
さて、本件ブログでは、水性高分子イソシアネートを原材料とする接着剤が健康被害の原因になった可能性に言及し、第1事件及び第2事件での準備書面や証拠を公開している。これらが一般的な論評や主張に過ぎないことは誰の目にも明らかで、仮に、接着剤と健康被害の因果関係が欠陥住宅の根拠とするには十分に立証されていないと判断されたとしても、本件建物に瑕疵と不法行為があるという事実には影響しない。